第53回現代書作家協会展作品 ~ 道因法師碑


8月5日~15日に六本木の国立新美術館で開催された
第53回現代書作家協会展です。



ニ年ぶりの開催となり、全体的に出品数は減ったものの、
関口鶴情先生の特別展や、現代書部門、臨書部門の力作が
ずらりと展示されていて、会場で直接作品を鑑賞できることの
喜びを改めて感じました。

緊急事態宣言発令中にもかかわらず、国立新美術館で無事に
開催できたことを心から感謝申し上げます。


今回は「道因法師碑」を全臨しました。
「道因法師碑」は「九成宮」の欧陽詢の息子、欧陽通の作品で、
線が鋭くて力強く、以前から大好きな古典の一つです。
この「道因法師碑」が課題法帖に選定された時は、次は必ずこれが書きたいと思いました。

臨書の本来の目的から言えば、必ずしも全臨する必要性はないのですが、第49回展作品の「孔子廟堂碑」全臨2017文字を超えるものを書かなければ、自分自身の発展はないと、常日頃から思っていました。
気力、体力、集中力の限界に挑戦して、自分の可能性を試したかったからです。

道因法師碑は全文2412文字なので、全臨となると、なかなか他の人が簡単に真似出来ないでしょうし、臨書であれ創作であれ、自分にしかできないものを作る「オンリーワン」は、常に目指しているつもりです。

あと、最初から一発勝負で一枚しか書かないと決めていました。
芸術作品は自分でも二度と書けない一回性のものであり、その芸術性の追求が作品制作のポリシーでもあります。

銀泥墨がすぐ乾いてしまいますし、一字一字、筆先に魂を込めて書き進めたので、一度に書くのは20字くらいが限度でした。

「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く、ただ一つの道」
有名なイチロー選手の言葉を肝に銘じて、合間を縫って少しずつ書き進め、完成するのに4か月ほどかかりました。

文字の形だけ見て、その形になるように自分の筆の動きで線を塗る「レタリング」臨書では、古典を自己流に歪曲してしまうことになります。
古典臨書は形から入るのではなく、「その動き、筆遣いで書いたら古典の持つ特徴が出てきた」というのが理想的です。

この度は桑風賞を頂き、大変光栄に思っています。
これに甘んじることなく、常にチャレンジ精神を忘れずに書道に励みます。

社中の皆さんも、多くの方が受賞されました。おめでとうございます。
コロナ禍で授賞式が中止になったのは残念ですが、常に前を向いて、
これからも書道に励んでいただければと思います。

本当にありがとうございました。


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