今回は顔真卿の争坐位文稿を半切に節臨しました。
争坐位文稿は広徳2年(764年)、当時検校刑部尚書の顔真卿が、
尚書右僕射の郭英乂に宛てた抗議文の草稿です。
書風は文字の大小、運筆の抑揚など変化に富んでいて、
粘り強い線質です。
この線質を再現するには、筆はなるべく軸を立てた直筆で、
起筆は蔵鋒で、力を抜かず、ずっと押していく感じで、
向勢、まるみの帯びた線を書きます。
…といっても、口で説明するのは難しく、
躍動感あふれる雰囲気を再現するのは 至難の業ですね。
ところで、今回書いた半切用紙は右下に耳がついています。
裁断工程で、隅が折れ曲ったまま切られて納品されたようですね。
自分ではこれを勝手に「福耳」と呼んでで、実際、この福耳の用紙で
書いたのが 一番出来が良かったとは思いますが…。