臨書 ~ 褚遂良 文皇哀冊(八月庚子将…)


日本書道学会8月号の半紙臨書条幅課題の文皇哀冊の一節です。

「文皇哀冊」は褚遂良54歳の作で、哀冊とは天子や皇后の崩御後に、
生前の功徳を讃える文章のことで、この哀冊は唐の太宗崩御の時、
当時の中書令であった褚遂良が読んだ哀冊文の草稿です。

枯樹賦と同じく、真跡本は現存せず、様々な集帖に刻されているため、
法帖によって、表情がかなり違います。
今回は自分が持っている「隣蘇園本」を使用しましたが、
他の法帖に比べて肉厚で、穏やかな雰囲気です。

褚遂良の作品は、「雁塔聖教序」にしても「伊闕仏龕碑」にしても、
この「文皇哀冊」などにしても、線が非常に澄んでいて、
清く爽やかな線の感触、節義を通すという凛とした気魄、心情が、
その線の質や文字構成の中にも見えてくるような感じを受けます。

このことから褚遂良が、並外れた信念を持って一生を貫いた
立派な人物だったと思われます。
正に「書は人なり」ですね。

臨書する際も、作者の人格はどのようなものであったか、
ということについての見解、自信、信念を持って臨書すれば、
味わいが一段と深くなり、強烈な情感が湧いてくると思いますよ。

 


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