日本書道学会11月号半紙臨書課題の書譜の一節です。
書譜は書論として優れているだけでなく、正統的な草書で変化も富み、
格調の高い書として評価が高いです。
総字数3776字の中には、穏やかな表情の部分、軽快な動きのある部分、
弾力があり、迫力がある部分など、様々な表情が見て取れます。
このような緩急の変化や、切れ味の良い線質などは書譜の魅力であり、
学ぶべき要素が詰まった古典だと言えます。
特に字形は、頭部を広く大きめに取り、中心部をぎゅっと締めて、
右下に重心を置くという王羲之の書の造形感覚の影響を受けています。
臨書する際は、どうしても活字文化の弊害を受けて、無意識のうちに、
左右対称に書いてしまいがちです。
楷書、隷書、篆書はともかく、古典の行書、草書に出てくる字は
左右対称ということはほとんどありません。
真ん中に来ると安定感は出ますが、躍動感はなくなり、
字が止まってしまっているという印象を受けます。
書譜は実に巧みな造形バランスで、倒れそうになっても、
次の画で受けて、体勢を立て直して書かれていますが、
こういった面も、創作に大いに役立つ要素だと言えるでしょう。