ノートの原稿も手書き

スタッフの方と打ち合わせした後日、助監督がノートと原稿を、僕の家の近くまでわざわざ持って来てくださいました。
原稿はパソコンで打ったものではなく、完全な手書きで、何人かのスタッフの方が手分けして書いたそうです。
それを見て、僕が一人で書き写していくのですが、予めノート一冊を書き上げるのではなく、
撮影のスケジュールに合わせて書いていかなければなりませんでした。

シャーペンの芯の濃さと下敷き

打ち合わせの時に、シャーペンの芯の濃さをどうするか、という話しになりました。
既に色々な濃さの芯が用意されていましたが、とりあえずHB、B、2Bと、順番に入れ替えて実際に書き比べました。
その結果、HBはやや薄すぎ、2Bはやや濃いということで、最終的に芯の濃さは「B」に決まりました。
それから、僕が普通ノートに書き込む時は、必ず下敷きを使っていたので、監督にも、
「下敷きは使った方がよろしいんでしょうか?」と尋ねました。
下敷きを使わない場合、書き進めていくうちに、書いた字の跡が筆圧で裏に写りますが、
それがかえって味がある、ということになって、「下敷きは使わないで書く」ということになりました。

東宝スタジオでの打ち合わせ

スタッフの方達と、最初に打ち合わせしたのは成城学園にある東宝スタジオ内でした。
内田けんじ監督をはじめ、スタッフの方達に挨拶をした時は、やはり緊張しましたね。
それから早速、助監督からノートとシャーペンを手渡されて、原稿の冒頭の部分を見ながら、ノートに書き写してくれと言われたので、スタッフの皆さんが見ている中、書き始めました。
半ページほど書いて、「字のぴんぴん尖った感じをなくしてほしい。」と言われたので、気をつけてもう一度書き直したところ、監督が文句なしとおっしゃったので、内心ほっとしました。
ちなみに内田監督は、韓国料理のような辛い食べ物が大好きだそうですよ。

泥棒のメソッド(仮)

代筆役を正式依頼されて、電話でスタッフと初めての打ち合わせの日時を決めている時に、
助監督に「あ、洪さん、何キロですか?」と聞かれました。
「175センチ、70キロの普通の体格ですよ。」と答えたら、助監督は安心されたようでした。
やはり、書くシーンで手が映るので、お相撲さんのような体格だとダメなんでしょうね。
それから、ファックスで映画の企画書を頂いてましたが、
その時のタイトルは、泥棒のメソッド(仮)で、「鍵」はまだついてませんでしたよ。

代筆役をすることになった経緯

去年の9月の終わり頃に、僕が所属している日本書道学会に、香川照之さんの代筆役を探しているという連絡が来ました。
条件は、30~50代の男性で、撮影スケジュールに合わせられる方、ということでした。
それで、条件に合う方がいれば、内田けんじ監督が書きっぷりを見たいので、紙にシャーペンで何か一筆書いて、ファックスで送ってくれとのこと。
これはオーディションみたいなものなのでしょうね。
僕はすぐに一筆書いて、ファックスで送ったところ、その日の夜に助監督から、是非代筆役をお願いしたいとの電話が来ました。
後で、助監督にお話を聞いたところ、かなりの数の書道教室に問い合わせて、ファックスを送ってもらっても、皆、字のクセが強過ぎてダメだったということでした。
香川さんが演じる役のコンドウは几帳面な性格なので、それが表れているような字を探していたそうですが、僕の送ったファックスを見て、スタッフ一同「これだ!」と思ったそうです。
僕の字もクセがありますが、正式な代筆依頼の連絡を頂いたということは、監督が僕の字を気に入ってくださったということなので、とても光栄に思いました。

映画「鍵泥棒のメソッド」

来週末9月15日から公開される映画「鍵泥棒のメソッド」に、僕が香川照之さんの代筆役で出演してます。出演といっても、書くシーンの吹き替えと、ノートの代筆ですので、顔は映ってませんが…。
今までは公開前だったので、ブログに映画のことを書き込むのは自粛していました。
しかし、映画の公開も間近に迫り、色々な方からご質問も受けるので、そのご質問に答える意味も含めて、ブログに映画のことについて書き込みしますので、よろしければ覧ください。
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