日本書道学会6月号の半紙臨書課題の高貞碑です。
高貞碑を臨書するにあたっては、唐時代の楷書の書法のように
筆をただ自然にスッと下ろしてくるだけでは勢いがつきません。
空間で反対方向から筆を引き上げて筆を入れること、
空間に舞い上がった線、つまり、空画(虚画)が大事です。
縦画を引く場合、空画でもって下から上に勢いを持ち上げ、
それから筆を紙に下ろしていきます。
横画を引く場合は、空画で空間を右から左へ勢いを持って行って、
それから起筆、線を右に引っ張っていきます。
ちょうど野球やテニス、卓球などでボールを打ち返す時に、
バットやラケットを引いてから、反動をつけて打ち返すのに
似ているかもしれません。
この高貞碑では、空間で反対方向から筆を入れる「空画」が非常に多く
使われているため、書かれた文字はスケールが大きく見えます。
筆が紙に触れる前に、空間で筆を働かせる予備運動をしてから、
筆勢を強めるというリズムを整えないと、
臨書していても「何か違う…」ということになってしまいます。
それから臨書する際は、墨量も非常に大切なポイントです。
筆に墨をたっぷり含ませて書くと、高貞碑の鋭い線が出にくくなり、
もったりした線になってしまいがちです。
渇筆が出るくらいの墨量が、風化、摩滅の感じが所々出て、
個人的には好みなんですが、一つに決めつけずに色々試しながら、
今後も追究していきたいと思います。