第50回現代書作家協会展作品 ~ 雁塔聖教序


8月10日~20日に六本木の国立新美術館で開催された
現代書作家協会展です。

今回から現代書作家協会展と名称が変わり、臨書部門と
現代書部門の作品が、同じ会場内で展示されることになりました。

特に50回目であることと、国立新美術館でのデビュー展を記念して、
昭和の大書家の先生と現在、ご活躍中の書家の先生方の臨書作品がずらりと展示されていて、大変勉強になりました。

今回は褚遂良の雁塔聖教序を黒紙に銀泥で全臨しました。

直近の臨書展では、欧陽詢「九成宮醴泉銘」を銀泥で、
顔真卿「多宝塔碑」を金泥で、虞世南「孔子廟堂碑」を銀泥で、
唐時代を代表する楷書を全臨してきたので、
褚遂良「雁塔聖教序」を全臨すれば、
唐時代の楷書「全臨四部作」として、一つの区切りになると思い、
チャレンジしましたが、色々大変でした…。

銀、金、銀…ときたので、今回は金泥で書こうかなと思い、
最初は紺紙に金泥で数行書いてみたんですが、
何か「雁塔聖教序」の雰囲気に合わず、思ってたイメージと
違ったので断念しました。

その後、金泥、銀泥、白墨と、紺紙、黒紙を色々組み合わせて
試したところ、銀泥に黒紙が一番しっくりきたので、
作品制作に取りかかりましたが…。

黒紙は紺紙に比べて、銀泥の墨のりが悪く、「雁塔聖教序」の
躍動感のある線質を再現すると、銀泥が運筆について来れず、
線が途中で切れたり、消えかかったりしてしまいました。

膠はスポイドで分量を測って銀泥墨に入れ、
書いた後は十分に乾かしてから、猪牙で表面を磨いたんですが、
ところどころ、かすかに銀泥が剥がれ落ちてしまいました。

時間があれば、もう一枚書き直したんですが…、書き直す時間もなく、
結局、これ一枚しか書けずに提出しました…。
後で審査員の先生に聞いた話では、表装の際に、
表具屋さんに直していただいたそうです…。

会場で、表装された自分の作品を、改めてじっくり見てると、
更に色々と問題点があることに気づきました。

まずはレイアウトの問題点です。
「雁塔聖教序」は「序」と「記」の二碑から成り立っているので、
石碑のレイアウト通りだと、二枚に分けて書かざるを得ません。
それを全紙一枚に収めようとすると、どうしても無理が生じます。

余白を詰めて、右半分に「序」、左半分に「記」、
最後の一行に落款を入れましたが、字間がなんとなく窮屈で、
「雁塔聖教序」の伸びやかさが相殺されてしまい、
やたらと真ん中の縦長一本の余白だけが目立ってます。

一行に62字入れましたが、これを60行くらいにしていれば、
全体の字間が1ミリずつ広がり、真ん中の余白も3分の2は埋まるため、
もう少しすっきりしたかなと思います。
まだまだ余白の見方が甘い、ということですね…。

あと、同じ出品委嘱の斎藤先生の「書譜」を拝見して気付きましたが、
「序」と「記」の書き出しをそれぞれ一字下げていれば、
より「品」のある作品になったのでは…と思いました。

このように見れば見るほど、色々と反省すべき点が出てきましたが、
それでも今回、「臨書選奨」を受賞できたことは非常に光栄に思います。

今回の反省点を踏まえ、次回の作品制作に励んでいきます。
ありがとうございました。

 

 


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