臨書 ~ 高貞碑(令望除秘書…)

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日本書道学会5月号の半紙臨書課題の高貞碑です。

唐時代の楷書の特徴を観察してみると、
虞世南の「孔子廟堂碑」や褚遂良の「雁塔聖教序」は遠心的と言うか、
勢いを遠くに放つように書かれています。
つまり、中心部で糸を束ねて握って、一本一本の糸が遠くへと
勢いを張っているように、伸びやかさが感じられます。

一方「高貞碑」はこれとは全く逆で、力をキュッと
文字の中心部へ締まっていこうという構えを見せています。
勿論、勢いは左右に放っているけれども、
どの字を見ても中へ点画を締め付けています。

唐時代の完成された楷書とは全く反対で、
気持ちをグッと中心に集めよう集めようとする
求心的な立場をとっています。
「九成宮醴泉銘」はどちらかというと求心的かもしれませんが、
「龍門造像記」などは求心的な表情をしています。

このような楷書は男っぽい気魄に満ちていて、
個性がはっきり出ているので面白いですね。

受講生の方には、唐時代の楷書を真剣に取り組んで書こうと思うなら、
まず北魏の楷書で線質を鍛えた方が良いと、常々言ってます。
そうしないと、文字の形だけを写し取ることに没頭し、
プリンターでプリントアウトしたような活字的な字に
なってしまう恐れがあるためです。

実用書が上手くなりたければ、唐時代の楷書から始めても
良いでしょうが、 唐時代のものから始めると、
楷書というのはこれだという固定観念にとらわれてしまいがちです。
北魏の楷書は自由、大胆で、楷書という概念を
非常に柔らかくしてくれます。

北魏の楷書を学んだ後で、再度、唐時代の楷書に取り組めば、
線の表情を豊かに出すことができるようになり、
深みのある楷書が書けるようになりますよ。


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