第49回 現代臨書展作品 ~ 孔子廟堂碑


1月12日~17日に上野の東京都美術館で開催された
第49回現代臨書展です。
今回は虞世南の孔子廟堂碑を、紺紙に銀泥墨で全臨しました。


一昨年の九成宮は銀泥、昨年の多宝塔碑は金泥と、
銀…金と交互に書いてきたので、
今回の作品は銀泥で書く番かな、と単純に思っていました。

ここ数年、現代臨書展の全作品を、
会場で一つ一つじっくり拝見しておりますが、
自分の見た限り、孔子廟堂碑を全臨した作品は無かったようなので、
「じゃ、自分が全臨するしかない。孔子廟堂碑なら銀が映える。」と、ピンときましたし、
全文2017字だから、2017年の念頭を飾る作品にちょうど良いと
思いました。

学生時代には三国志とか、色々な長編小説、シリーズものを
よく読みましたが、 好きで読んだというよりは、
ずらりと長編ものが並んでいるのを見ると、
「よし、これ全部読んでやろう。」という意気込みで、
完読したことが多かったですね。
勿論、読んでいるうちに面白くなり、好きになりましたが…。

今回もその学生時代の意気込みを思い出し、全臨に挑みました。

孔子廟堂碑は大らかで、高尚な感じを見る人に与え、
実に格調の高い楷書です。

虞世南と欧陽詢の優劣論として有名な一文にも
「虞世南は内に剛と柔を合わせもち、
欧陽詢は外に筋と骨を露出している。
君子は器を蔵すという見方からすれば、虞世南のほうが優っている。
虞は一見すると温厚で、柔和に見えるが、
どの点画もその内面に筋骨が中庸を得ていて、
芯の強さ、剛毅さがある。「柔能く剛を制す」ともいえる」
とあります。

この気品あふれる楷書は、虞世南の温厚で謙虚な人柄が
そのまま表現された結果でもあるため、
筆を取る前にまず、虞世南の人間像を頭に浮かべてから臨書しました。

日常生活においても断酒し、
なるべく穏やかな気持ちでいるように心がけ、
イライラした時には決して筆を持たないようにしました。
運筆は決して急がず焦らず、ゆったりと、結構は伸びやかに上品に、
一字一字を精魂込めて書きました。

当然、一日二日では全部書けないので、日々の時間の合間を縫って、
少しずつ書き進めていきました。
膠を入れないと、書いた後に剥げ落ちてくるので、
毎回水の量と膠の量はスポイドで計量し、
墨を磨る回数をカウントしながら 調合するのも結構大変でした…。

字数が多いので、最初から一枚だけしか書かないと決めて
挑みましたので、 今回はこれ一枚しか書いてません
(書けませんでした)。
結局、この一枚を書くのに4か月近くかかり、
体重もまた3キロほど減ってしまいましたが…。
でも、全臨し終えた時は、マラソンを完走した時のような達成感が
得られましたよ。

このたび、最高賞の桑風賞と臨書選奨の二つの賞を頂くことができ、
光栄に思っております。
易経の「亢龍有悔」を常に肝に銘じながら、
次の50回の作品制作に励んでまいります。
本当にありがとうございました。

 


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