ハングル書芸フリム体作品 ~고향(コヒャン:ふるさと)

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日本書道学会全国展に出品したハングル書芸フリム体の作品です。
今年は日韓国交正常化50周年ということもあって、
以前から考えていたハングルと、かなのコラボレーションが
今回の作品のコンセプトです。
韓国の詩人の鄭芝溶(정지용:ジョンジヨン)の「ふるさと」
(고향:コヒャン)を題材に選びました。

고향에 고향에 돌아와도    ふるさとに ふるさとに帰っても
그리던 고향은 아니러뇨    心待ちにしていたふるさとは此処には
ない
산꿩이 알을 품고         山の雉が卵をいだき
뻐꾸기 제철에 울건만      ホトトギスは時を得て鳴くけど
마음은 제 고향 지니지 않고   胸のうちにわがふるさとはなく
머언 항구로 떠도는 구름      遠い港へと漂いゆく雲
오늘도 뫼 끝에 홀로 오르니   今日もひとり山に登ると
흰 점 꽃이 인정스레 웃고     白い花が ひとつ 温かく笑み
어린 시절에 불던 풀피리 소리 아니 나고
あどけないころ 奏でた草笛は 今は音も出ず
메마른 입술에 쓰다 쓰다     ひからびた唇に空しいばかり
고향에 고향에 돌아와도    ふるさとに ふるさとに帰っても
그리던 하늘만이 높푸르구나  心待ちにしていた空だけが どこまでも高く蒼い

この詩は鄭芝溶が1920年代に日本での大学生活を終えて、
故郷に戻ってきた時の 心境、亡国の思いが強く込められた内容に
なっています。
大好きな詩で、行書体であるフリム体で扇子に書きました。

写真で見る限りは普通の扇子に見えますが、骨の長さが縦80㎝程あり、
広げると全紙の大きさになる特大扇子です。
↓下の写真でsuicaの大きさと比べると、
お分かりいただけるかと思います。

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この特大扇子は2年程前に書道用品店で購入したもので、 箱には
「中國宣紙桂扇」とあり、在庫はもうこれしかありませんでした。
いつか、これに作品を書きたいと思いつつ、温存していましたが、
いざ、作品を書くとなると、色々大変でした…。

まず、レイアウトをどうするか…。
扇面は下に行くにつれて幅が狭くなるので、各行が同じ字数だと、
どうしても下の字を小さく書かざるを得ません。
それで逆の発想で「では小さく書かずに済ませるためには、
どう工夫すれば いいか」を考え、色々な漢字作品などを参考にして、
7字5字…で ジグザグに配字し、落款印まで何とか
上手く収めることができました。

レイアウトが決まり、一度全紙に特大扇子の型取りをして、
試しに一枚書いてから本番に入りました。

特大扇子に直接書くのは、最初に全部広げてしまっては
非常に書きにくいので、2行ずつ広げて書いて、
墨が乾いたら閉じて、次の2行を広げて書いて…という風に
書き進めました。

あと、書いてる時に骨や折り目が筆に当たるので、
左手で中心(要)に近い骨を押さえて、
紙面ができるだけ平らになるようにして書くので、
姿勢も結構無理がありましたね。

一発書きで失敗は許されず、且つ縦横の行をそろえて書かなければ
ならなかったので、かなり大変でしたが、2時間くらいでミスもなく
書き上げ、落款印、引首印も綺麗に押せて
無事に完成させることができました。

…が、いざ、会場で展示となると、またまた苦労が…。
特大扇子の後ろに紐が固定してあるので、
ワイヤー2本掛けにすればいいと思ってましたが、
実際掛けてみると扇子の重さで勝手に閉じられてしまい、
なかなか綺麗に開いてくれません…。

結局、骨が閉じないように数か所画鋲などで固定しましたが、
どうしても扇子の中心部が全開とならなかったのが心残りでした…。

ですが、インパクトのある作品になったと思います。
この作品を見て、ハングル書芸に関心を持つ方が増えると嬉しいですね。


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